高気密高断熱の性能はどう見る?基準やレベルを解説
2023/06/13
高気密高断熱で用いる3つの指標
高気密高断熱の家は、冷暖房の熱が逃げづらく、家の外が寒くても暑くても外気が入ってこないため、室内を快適な温度に保てます。高気密高断熱を表す指数には、UA値、C値、Q値がありますが、それぞれの違いは次のとおりです。
Q値
熱損失係数のことで、家から熱が逃げやすさを表す数値です。Q値の値が低いほど、熱が逃げづらいことを意味します。Q値は住まい全体の熱の逃げやすさを示すものですから、数値には換気によって逃げる熱も考慮され、エアコンを含む断熱性能を知れるのが特徴です。
Q値は以下の計算式で算出されます。
Q値=熱損失量(w/k)÷延床面積(㎡)
推奨値:1.6W/㎡・K以下
UA値
外皮平均熱貫流率のことで、家から外にどれくらい逃げやすいかを表す数値です。外気との温度差が1度の場合、1㎡あたり1時間でどのくらい熱量が損失するかを示します。
UA値は以下の計算式で算出されます。
UA値=熱損失量(w/k)÷外皮面積(㎡)
Q値と似たような見た目ですが、Q値は延床面積を用いて計算するのに対し、UA値は窓、壁、天井などのそれぞれの箇所の外皮面積を用いて計算し、換気は考慮しません。
推奨値:UA値の推奨値は地域によって異なります。ZEH基準では、寒い地域ほど基準が厳しく、北海道では0.46、宮崎県、鹿児島県では0.87です。
C値
相当隙間面積のことで、住まいにどのくらいの隙間があるかを表す数値です。数値が低いほど、隙間がなく冷暖房効率もよいということになります。
C値は計算式ではなく、専門の測定器を用いて測定します。
推奨値:1.0㎠/㎡
断熱等性能等級
断熱等性能等級は、省エネ性能をランク分けするための基準で、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)で規定されています。
断熱等性能等級の省エネ基準
省エネルギー基準は段階的に改定され、新たな等級が制定されました。現在の等級には7段階あり、数が大きいほど省エネ性能に優れていることを意味します。性能等級の制定年と省エネ基準は次のとおりです。
等級1:無断熱で省エネへは無対応
等級2:1980年に制定。旧省エネルギー基準であり、断熱および省エネ性能は低い
等級3:1992年に制定。新省エネルギー基準であり、断熱および省エネ性能は一定のレベルを確保
等級4:1999年に制定。次世代省エネルギー基準であり、壁、天井などに断熱材、開口部には複層ガラスを使用
等級5:2022年4月に制定。ZEH基準の水準であり、エネルギー収支をゼロにするために必要な断熱性能を有している
等級6:2022年10月に制定。省エネ基準比であり、1次エネルギー消費量を約30%削減可能なレベル。HEAT20のG2グレードと同レベルの断熱性能
等級7:2022年10月に制定。省エネ基準比であり、1次エネルギー消費量を約40%削減可能なレベル。HEAT20のG3グレードと同じレベルの断熱性能
※HEAT20については次項で説明
最低限の水準は断熱等性能等級4
欧州では、日本より寒さが厳しいという理由もありますが、日本よりも断熱基準が厳しく制定されています。欧州に遅れをとっていた日本も、2022年6月13日に建築物省エネ法の改正法が成立しました。改定法成立により、断熱等性能等級4が義務化され、2025年以降は、断熱等性能等級4の基準を満たさない建物の建設はできなくなります。
地域によって評価基準が異なる
必要となる断熱性能は、地域によって違ってきます。断熱等性能等級は、UA値(外皮平均熱貫流率)でランク分けしますが、気象条件で8地域に区分し、地域ごとに評価基準が定められています。
HEAT20における基準
HEAT20は「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」のことで、英語で表記したときの「Investigation committee of Hyper Enhanced insulation and Advanced Technique for 2020 houses」の頭文字をとったものです。HEAT20は、環境負荷の低減と高品質で安全な住まいの普及を目指していて、室内の温度環境による独自の断熱性能基準を設けています。
HEAT20における基準
グレードは3つ、地域区分は7区分あります。グレードの数値が大きいほど基準が厳しくなり、秋田県は沿岸地方の一部地域を除いて3地域に分類されます。それぞれの評価基準は次のとおりです。
G1
1・2地域 | 3地域 | 4~7地域 | |
冬期間の最低体感温度 | 概ね13℃を下回らない | 概ね10℃を下回らない | |
体感温度が15℃未満となる割合 | 3%程度 | 15%程度 | 20%程度 |
暖房負荷削減率 | 約20%削減 | 約30%削減 |
G2
1・2地域 | 3地域 | 4~7地域 | |
冬期間の最低体感温度 | 概ね15℃を下回らない | 概ね13℃を下回らない | |
体感温度が15℃未満となる割合 | 2%程度 | 8%程度 | 15%程度 |
暖房負荷削減率 | 約30%削減 | 約40%削減 | 約50%削減 |
G3
1・2地域 | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 | 7地域 | |
冬期間の最低体感温度 | 概ね16℃を下回らない | 概ね15℃を下回らない | 概ね16℃を下回らない | |||
体感温度が15℃未満となる割合 | 2%未満 | 3%程度 | 2%未満 | |||
暖房負荷削減率 | 約50%削減 | 約60%削減 | 約70%削減 | 約75%削減 |
ZEHのUA値との違い
ZEHにも、HEAT20にもUA値(外皮平均熱貫流率)も用います。UA値は数値が少ないほど、断熱性能が優れていることを意味しますから、HEAT20はZEHの基準より評価基準が厳しいこと分かります。2019年6月に制定された最も厳しい基準のG3は、ドイツのパッシブ住宅を目標としたものです。
地域区分 | ZEH基準 | HEAT20 G1 | HEAT20 G2 | HEAT20 G3 |
1地域 | 0.40 | 0.34 | 0.28 | 0.20 |
2地域 | 0.40 | 0.34 | 0.28 | 0.20 |
3地域 | 0.50 | 0.38 | 0.28 | 0.20 |
4地域 | 0.60 | 0.46 | 0.34 | 0.23 |
5地域 | 0.60 | 0.48 | 0.34 | 0.23 |
6地域 | 0.60 | 0.56 | 0.46 | 0.26 |
7地域 | 0.60 | 0.56 | 0.46 | 0.26 |
住まいの住み心地は住んでみないと分からないともいわれますが、高気密高断熱で用いる指数や断熱等性能等級などで、家の機能性は建てる前に知ることが可能です。高気密高断熱の住まいは快適なだけではなく、光熱費を安くできます。
長期優良住宅に認定されれば、税制面でメリットも生じますから、注文住宅を検討中の方は、高気密高断熱の基準やレベルを理解して設計を依頼することをおすすめします。秋田での家づくりでも、ぜひこうした考え方を取り入れましょう。工務店選びで迷ったら、国内トップレベルのUA値やC値を独自工法で実現する日沼工務店へ相談してみてはいかがでしょうか。